ケガの応急処置、最新の考え方とは?
お子様がスポーツ中にケガをしてしまった時、「どうすればいいの?」と不安になりますよね。これまで、ケガの応急処置としてRICE処置という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし近年、スポーツ医学の世界では、このRICE処置に代わる、もっと効果的で、身体の自然な回復力を最大限に引き出すための新しい考え方が提唱されています。
ここでは、その最新の応急処置の考え方を、スポーツのケガで困っている選手や保護者の皆様に分かりやすく解説します。
RICEからPOLICE、そしてPEACE & LOVEへ
かつての常識「RICE処置」って?
- まず、これまでの基本的な応急処置だったRICE処置についておさらいしましょう。これは、ケガをした直後の炎症や腫れを抑え、悪化を防ぐことを目的としたものです。
- Rest(安静):ケガをした部位を動かさず、休ませる
- Ice(冷却):患部を冷やして炎症や痛みを抑える
- Compression(圧迫):弾性包帯などで患部を圧迫し、腫れを抑える
- EElevation(挙上):患部を心臓より高く上げて、腫れを軽減する
- これは急性期の対応として非常に有効で、現在でも大切な考え方の一つです。しかし、近年の研究で
「本当に完全な安静が常に良いのか?」「炎症を過度に抑えることが、かえって治りを遅らせることもあるのでは?」といった疑問が投げかけられるようになりました。
①新しい考え方:POLICE(ポリス)プロトコル
- RICE処置の考え方を進化させたものが、POLICEプロトコルです。一言で言うなら「動かさない」から「適切に動かす」 特にRICEの「R(Rest:安静)」を見直し、より早期からの「最適な負荷」の重要性を提唱しています。
- Protection(保護):ケガをした部位を、テーピングやサポーターなどで保護し、さらなる損傷や悪化を防ぎます。
- Optimal Loading(最適な負荷):ここがRICEとの大きな違いです。ケガをした部位を完全に動かさないのではなく、痛みのない範囲で、少しずつ「最適な」負荷をかけて動かすことを意味します。例えば、足首の捻挫なら、初期は体重をかけずに足首をゆっくり動かす、などです。これにより、組織の回復を促し、筋肉や関節が硬くなるのを防ぎ、早期の機能回復を目指します。
- Ice(冷却):以前と同様に冷却は行いますが、長時間の過度な冷却は避けるようにします。炎症は組織の修復に必要な要素でもあるため、そのバランスを考慮します。
- Compression(圧迫):弾性包帯などで適切に圧迫し、腫れや内出血を抑えます。
- Elevation(挙上):患部を心臓より高く挙上し、腫れを軽減します。
POLICEプロトコルは、「安静にしすぎず、適切な時期から少しずつ動かし始めること」が治りを早め、元の状態に戻すために大切だという考え方です。
②新しい考え方 PEACE & LOVE(ピース&ラブ)プロトコル
- そして、さらに新しい、ケガの回復プロセス全体を考慮した包括的なガイドラインがPEACE&LOVEプロトコルです。これは、ケガの「急性期(ケガをした直後)」と「亜急性期~回復期(回復が進む時期)」でそれぞれ異なるアプローチを提唱しています
ケガの直後(急性期)の対応
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受傷後数日間、炎症や腫れが最も強い時期に行うべきことです。
- Protection(保護):痛みを誘発する動作を避け、患部を保護します。無理な動きでケガを悪化させないことが最優先です。
- Elevation(挙上):患部を心臓より高く挙上し、腫れを軽減します。
- Avoid Anti-inflammatories(抗炎症薬の回避):炎症は身体がケガを治そうとする初期反応でもあるため、医師の指示がない限り、過度な抗炎症薬(痛み止めなど)の使用や長時間の冷却は控えることが推奨されることがあります。自然な治癒プロセスを尊重する考え方です。
- Compression(圧迫):弾性包帯などで適切に圧迫し、腫れや内出血を抑制します。
- Education(教育):ケガの状態や回復プロセスについて、正しい知識を学ぶことが大切です。患者さん自身がケガと向き合い、主体的に回復に取り組む意識を持つことが、治りを早めることにつながります。
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ケガから数日後(亜急性期〜回復期)の対応
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腫れや痛みが少し落ち着いてきた時期から、本格的な回復に向けて行うべきことです。
- Load(負荷):痛みのない範囲で、徐々に、そして段階的に患部に「負荷」をかけていきます。例えば、ケガをした足に少しずつ体重をかけ始めたり、軽い筋力トレーニングを行ったりします。これにより、損傷した組織が正しい方向で修復され、強度を取り戻していきます。
- Optimism(楽観的思考):ケガの回復には、ポジティブな気持ちが非常に大切です。「きっと良くなる!」と信じる気持ちが、身体の治癒力にも良い影響を与えます。
- Vascularisation(血流促進):痛みのない範囲での軽いウォーキングやサイクリングなど、患部への血流を促す運動を行います。血流が良くなることで、回復に必要な栄養素が供給され、老廃物が排出されやすくなります。
- Exercise(運動):ケガをした部位の関節の動き(可動域)、筋力、バランス感覚などを回復させるための運動を、専門家の指導のもと段階的に行います。最終的には、スポーツへの復帰を目指した練習も取り入れていきます。
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なぜ新しい考え方が生まれたの?
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これらの新しいプロトコルが生まれた背景には、「身体が持つ自然な治癒力」をより重視するようになったことがあります。
かつては「とにかく炎症を抑え込む」ことに重点が置かれましたが、炎症は身体が損傷した組織を修復するために必要な最初のステップでもあります。過度な安静や冷却は、この自然な回復プロセスを妨げてしまう可能性も指摘されるようになりました。
新しい考え方は、ケガのタイプや重症度、個人の回復段階に合わせて、「最適なタイミングで、最適な刺激を与えること」より早く、より完全にケガを治すために重要だということを教えてくれます。
- その見極めをすることこそが私たちセラピストの役割だと考えています。
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スポーツをしているお子さんのケガは、成長期の身体の特徴も考慮しながら、適切な対応をすることが非常に重要です。
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